凛とした女性の変貌を見守って行く。

遊び過ぎ、疲れ過ぎで、
伊豆の廃墟散策に行けなかった自分を呪うー





変化は突然に。
なんの前触れ的なモノもなく、ただ驚くばかり。
いつも挨拶をしてくれる近所のおばさんが、
アルツハイマーになったと聞かされた。



この前のコト、急いで着替えて再び出かけようとしていた時、
いつもはワタシの身体の心配をしてくれるおばさんが、
いつものように話しかけてきた。



「あら?今日も着物でお出かけなの?」



ちょっと着替えて、また出かけますの言葉はかき消され、
着物はイイわよ。着物わ。
自分に手をかけられるって、イイわよ。
ワタシなんか、全然ダメよ。
花ばかりイジってて、他に能がなくって・・・
本当にダメなのよ。






あれ?って思った。
何かおかしい、凄くおかしい。
お世辞でも何でもなく、花を育てたり鑑賞するコトは、
非常に重要で、それだけで生きている理由になるとか、
人間的ステージがあがるとか、
脳にとってのゴチソウだとか、そんな話しをした。



その話しを有り難そうに聞いてくれる反面、
途中で、また犬を可愛がろうと思って・・・
でもお父さんが、放っておけって言うの。
自分の身体が大事だろうってね。
でも娘が嫁に行ったから、ワタシは面倒みなくちゃって思ってて、
でも何だか疲れちゃって・・・
でも犬はかわいいのよ。
こんなに小さいし。
かわいく見えてくるのよ。





そのお宅で犬を飼っていたコトは、恐らくないし、
どこの犬のコト何だか、さっぱり分からないし、
何より、その人の言葉は頼りなく、かき消されて、
大半が聞き取れなかった。
このやり取りが、約30分も続いた。





最後の方は、取り繕うのが大変で、
随分顔が引きつっていただろうなぁ。
昨日も、そのおばさんに声をかけられた。
銀髪のズラのワタシに「あら?染めたの?」
ワタシはすかさず「これズラだよ!」って言ったんだけど、
まだ若いのに、ワタシ達みたいな色に染めるなんて、
もったいないね〜



急いでいたので、行ってきまーすって走り去ってしまった。
ごめんね、ごめんね。








ワタシが病院へ運ばれる度に、
ワタシの身体を心配して、必ず声をかけてくれた。
凛とした印象の人で、ワタシなんかに声をかけてくれるのが、
何より嬉しかったのに、
なんの前触れもなく、変わってしまったその人に、
どんな風に接するのが1ばんなのか、考えてしまった。
今まで通りが良いのは分かっているんだけれど、
全部の話しを聞く訳にはいかないし、
どこで、どのタイミングで切り上げたらイイんだろう?




モンママは、80才過ぎてるけど、
そんな予兆ゼロな感じで、元気だし、
膵臓がんで他界したパパも、ずっと若いままだった。
そのおばさんは、全然若い。
それなのに変化はあまりに突然で、酷く急激である。
これから加速度的に、病状が進んで行くかも知れない。
旦那さんが面倒を見るんだろうか?
同級生の娘が、引き取るんだろうか?
本人は、気付いているんだろうか?



いずれにせよ、すぐ隣に住むその人の今後の変化を、
まじまじと見せつけられるコトになるんだろうな。
元気で居て下さい。